バイオマス発電とは?発電の仕組みや種類を図で分かりやすく解説
2020.10.27

地球温暖化対策の1つとして、再生可能エネルギーであるバイオマス発電が注目されています。しかし、バイオマス発電が具体的にどのようなものなのかは、あまり知られていません。
この記事では、バイオマス発電とはどのような発電方法なのか、その仕組みや種類、メリットとデメリットについて解説します。
バイオマス発電とは?
「バイオマス」とは、動植物などの生物からつくり出されるエネルギー資源のうち、石油などの化石燃料を除いたもののことです。有名なものでは、車の燃料として使われるトウモロコシなどの穀物があります。
また、バイオマス発電とはバイオマスを利用した発電方法のことで、エネルギー源となるバイオマスを直接燃焼したり、発酵させてガス化したのちに燃焼したりしてエネルギーを取り出し、発電します。
バイオマス発電によって得られるエネルギーは、植物などの再生産によって持続的に生み出し続けることができるため、再生可能エネルギーの1つとして注目されています。
バイオマス発電に使えるものは?
バイオマスに由来するエネルギー資源を、バイオマスエネルギーと呼びます。バイオマスエネルギーには、木質燃料やバイオディーゼル、バイオエタノール、バイオガスなどがあります。
このうち、バイオマス発電に使用されるバイオマスエネルギーは、木質燃料やバイオガスです。
木質燃料は、間伐材や廃材などの木質バイオマスを燃料として利用するものです。バイオガスは、生ごみや家畜の糞尿などの廃棄物系バイオマスを発酵させて発生するガスのことです。
バイオマス発電に利用されるバイオマス | |
木質バイオマス | 廃棄物系バイオマス |
・間伐材 ・製材工場残材 ・林地残材 ・建築廃材 など |
・生ごみ ・食品加工残渣 ・家畜の糞尿 ・汚水・汚泥 など |
→ 木質燃料 | → バイオガス |
ほかにもあるバイオマスの利用法
バイオマスには、発電以外の利用方法もあります。
例えば、バイオマスからつくられたバイオプラスチックやバイオインキは、レジ袋や商品パッケージなどで利用され、普及しました。市区町村指定のごみ袋の素材に、バイオプラスチックが使用されている地域もあります。
なお、バイオマスを用いた商品には「バイオマスマーク」が付けられています。近年では、バイオマークを日常生活の中で目にする機会も増えてきました。

また、生ごみや家畜の糞尿は肥料として利用することも可能です。
さらに、廃食用油や木質系のバイオマス、トウモロコシなどの資源作物をもとに、バイオディーゼルやバイオエタノールなどの燃料(バイオ燃料)を精製でき、これらは車の燃料として使用されています。
このように、バイオマスには発電以外にもさまざまな用途があります。
バイオマス発電の基本的な仕組みや種類
バイオマス発電は、どのような仕組みで電力を生み出しているのでしょうか。
火力発電や原子力発電では、化石燃料の燃焼や核分裂反応によって生じた熱エネルギーを利用して水を沸騰させ、その力でタービンを回すことによって発電しています。
バイオマス発電でも「タービンを回す」ことによって発電しますが、その方法には「直接燃焼方式」「熱分解ガス化方式」「生物化学的ガス化方式」と、大きく3つあります。

直接燃焼方式
まずは、直接燃焼方式の仕組みをご紹介します。
直接燃焼方式では、木材や可燃ごみ、廃油などを原料として燃焼しやすいように加工し、これらをボイラーで燃焼させます。そして、水を沸騰させ、発生する水蒸気で蒸気タービンを回して発電する仕組みです。
このように、バイオマスを直接燃焼させて発電するのが直接燃焼方式です。
直接燃焼方式では、温度が比較的低く、大型の設備でないと発電効率が悪いという特徴があります。また、設備が大型化すると、木材などの原料も大量に確保する必要があります。

熱分解ガス化方式
次に、熱分解ガス化方式についてです。
この方法では、木材や食品加工残渣などのバイオマスを直接燃焼させず、高温で熱処理します。熱処理によってバイオマスは加熱分解され、可燃性のガスを発生させます。
このとき発生したガスを燃料として燃焼させ、ガスタービンを回して発電する仕組みです。
熱分解ガス化方式は燃焼温度が高く、直接燃焼方式よりも小さい規模で発電することができます。

生物化学的ガス化方式
最後に、生物化学的ガス化方式について説明します。こちらは、バイオマスエネルギーを生物化学的に変換させて利用する方式です。
具体的には、家畜の糞尿や生ごみ、汚水・汚泥などを発酵させ、発生するメタンガスなどのバイオガスを燃料として使用します。
バイオガスを燃焼させ、ガスタービンを回して発電するのが生物化学的ガス化方式です。
水分が多くて直接燃焼させくいバイオマスや廃棄物を有効利用でき、発生するガスの発熱量が高いため発電効率が高いこともポイントです。

バイオマス発電のメリット・デメリット
再生可能エネルギーの1つとして注目を集めるバイオマス発電ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここでは、バイオマス発電のメリット・デメリットを具体的に紹介します。
バイオマス発電のメリット
まずは、バイオマス発電のメリットからみていきましょう。
バイオマス発電は、必要に応じて燃料を投入すれば、安定して発電を続けることができます。太陽光発電や風力発電など、自然環境に依存する発電方法に対して、これは大きなメリットであるといえます。
また、循環型社会への寄与、地球温暖化対策としても大きなメリットを持ちます。
例えば、木質バイオマスで考えてみましょう。樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込んで有機物を合成し、自分のからだをつくっています。
樹木から木質バイオマスを得て燃焼させると二酸化炭素が発生します。しかし、これはもともと大気中にあった二酸化炭素を樹木が吸い込んでいたものが、再び大気中に戻っていっただけなので、カーボンニュートラルだといえます。
家畜の糞尿など、ほかのバイオマスに関しても同様のことがいえます。
このように、バイオマス発電は再生可能エネルギーの1つとして循環型社会の構築に寄与し、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素などの温室効果ガスを大気中に蓄積することもありません。
また、木材や家畜の糞尿などを材料とするため、それらの供給源となる農林漁村の活性化や地域環境の改善にもつながることが期待されます。

バイオマス発電のデメリット
続いて、バイオマス発電のデメリットについて紹介します。
バイオマス発電には、バイオマスの収集や運搬、管理などの燃料コストが継続的にかかります。
特に、日本の場合はさまざまなバイオマスが小規模に分散しているため、燃料コストが高くなる傾向があります。
太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーを利用する発電方法には燃料コストがかからないことを考えると、この点はデメリットといえるでしょう。
さらに、バイオマス発電の発電効率そのものは低く、たとえば木質バイオマス発電の発電効率は、高くても20%~25%程度です。
また、バイオマス原料の需要も高まりをみせていて、バイオマス燃料も高騰しつつあるほか、発電後の廃液を処理しなければ公害の原因になってしまうことも問題となっています。
バイオマス発電には、メリットばかりでなく、このようなデメリットがあるのも事実です。
バイオマス発電は普及する?課題はある?
今後、バイオマス発電は普及するのでしょうか。バイオマス発電が抱える課題も合わせ、その将来性が注目されます。
再生可能エネルギーの普及を目指して導入されたFIT制度(固定買取制度)は、バイオマス発電にも適用されており、FITの追い風を受けてバイオマス発電も普及が進んできました。
ただし、FITにより各地でバイオマスが利用されることとなりましたが、その買取価格は低く、生産者に利益が還元されていないのが実状です。
また、小規模で燃料コストが高くなりやすい日本のバイオマス発電では、化石燃料発電と比べると発電コストがかかってしまいます。さらに、ここ数年で太陽光発電や風力発電などの発電コストが下がってきたことも、バイオマス発電にとっては向かい風となっています。
そして、バイオマス発電であっても、FIT期間の終了後も電力会社に売電することはできますが、その価格は市場に左右されます。
自然エネルギーと違って、継続的にかかる高い燃料コストがネックとなり、FIT期間終了後にバイオマス発電で利益を上げることは簡単ではないといえます。
しかし、バイオマス発電の未来は、これからの技術革新や取り組みによって大きく変わる可能性があります。バイオマス発電がもつ林業や畜産との関係性の深さは、バイオマス発電の未来を考える上で非常に重要なカギとなります。
例えば、農林漁村地域ではバイオマス資源を容易に調達することができるので、地域と一体になった取り組みによって、足かせとなっている燃料コストを削減することができるでしょう。
発電事業だけでなく、バイオマスの調達もセットでとらえた取り組みで発電コストを削減し、また、新たな雇用を生み出すなど地域の活性化につなげることもできるでしょう。
この記事では、バイオマス発電の種類やメリット・デメリットについて解説しました。
カーボンニュートラルで環境にやさしいバイオマス発電は、持続可能社会の構築に重要な役割を果たすことが期待されます。
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